人気ブログランキング | 話題のタグを見る

タオと猫の庭

幸福感

一気には読めなかったモームの「お菓子とビール」を読み終わった。

文壇小説と言うよりは,
わたし的には恋愛小説…だった。小説家の妻の話、でもある。

ここにもまた、人間の心の矛盾が複雑に書かれていた。

子どもを亡くした妻が、その夜、街に出て見知らぬ男に抱かれるということの

正当性を、ロウジーが語る。人間は矛盾のかたまり。この論法で行くとキリスト教的なものは

すべて覆されてしまうけれど。

ようやくモームの文体に馴染んできたけれど、モームはちょっとひと休み。

複雑になってしまった頭の中を、透明にしたくて、

昨日、借りた村岡花子「生きるということ」を読む。

村岡さんは、志が高く、自分をしっかり持った人と言う印象。

テレビがないので、話題になっている「花子とアン」は見られないけれど

この一冊で、村岡さんの生き方がよくわかった。

言葉をノートにいくつか書きとめた。

年を取られても、ちいさな子どもの気持ちにも寄り添えた人。

本は人生の道を照らす灯りだと信じて生きた人。

まるまるひとつ、だれかの人生を生きたような気がする本に出合うとうれしい。

村岡さんは、「エミリーの求めるもの」を訳し終えた後、

大阪のお孫さんに会いに行って、のんびりした日々を過ごし、そのときのことを随筆を書いて、2日後に亡くなっている。

6才で亡くなられた息子の道雄さんの思い出話がかわいくて切なかった。

村岡さんが訳した赤毛のアンの中の言葉を、いくつも思い出した。

アンの中には、数えきれないくらい、人生を教わる言葉があるのだけれど、

「迷ったときは80歳になったときの自分が、そのことをどう思うか想像してみるのよ」
という意味の言葉を、わたしは度々思い出し、そうしています。

この二冊の本には、生き方で言えば、裏と表のことが書かれていた。

でも、「最近の人はなぜ幸福幸福とそればかり追い求めるのかしら。日常を生きた結果として、そこに幸福があるというのならわかるけれど」と言う村岡さんの言葉は
モームの「ペルシャ絨毯の教え」(人生に意味はなく、生き方が複雑な模様になる)に通じるものがあって興味深い。
by f-azumi | 2014-05-21 17:55 |
<< どすこいのんちゃん 集う >>


四匹の猫と暮らしのこと