タオと猫の庭

「残された人々」

アレグサンダー・ケイの「残された人々」はアニメ未来少年コナンの原作です。

わたしはアニメーションを見ていないので

新鮮な気持ちで読んだ。

磁力兵器を使った戦争で起きた大津波。

世界は海に呑みこまれ、生き残ったのはわずかな人々。

予言の声を聞くことができる老科学者ブライアック・ロー。

捕虜になったローを助けるために闘う少年コナン、少女ラナ。

この二人も、はるか遠くの声を聞くことができるコミュニケーターだ。

科学都市インダストリアの廃墟で、なおも科学の力だけをうのみにして

世界を支配しつづけようとする権力者たちの姿は愚かで残忍。

目先の欲望につられ、権力者たちにとり込まれていく心の弱いひとびと。

生きて行くために本当に大事なものは何なのか

どう行動しなければならないのか

今の現実世界とぴたりと重なる流れに驚きながら、読み終えた。



この本自体が預言の書です。

大津波のこわさは、先の大震災にあまりにも重なりすぎ。

何からなにまで、科学合成物で作りだされた社会(食べ物まで)

人が人を監視しあう(互いに信じ合うことができない)監視社会。

そしてそれを「平和な新社会」だと信じる間違いに気づかない人々。

わずかな人々が、乏しい自然の恵みから糧を得て昔ながらの暮らしを取り戻そうとしている。

ふたたびの大津波の警告を、命の危険をかえりみず

支配者たちに告げに行くブライアック・ロー。

根拠のない安全を唱えて、ローをあざわらうインダストリアの人々。

敵に塩を送るような、ローの行動を見て

自分の身の危険を冒して、敵対する少年に手を差し述べる最後のコナンの行動に

「未来」を感じた。

はらはらドキドキの後の、希望に満ちた読後感だった。

でも、結末は書かれていない。

全てがまた、大津波に呑まれてしまうのか

それとも、こんどこそ、皆が手を取りあって、ほんとうの新社会を作ることができるのか。

孤独な五年間の無人島生活でコナンの心と体は鍛えられた。

最後はブライアック・ローという、聡明で勇気ある科学者によって、コナンは指導者として成長を遂げる。


わたしの心に残ったのはもちろん主人公のコナンやラナ、ローの存在ですが、

いちばん印象深いのは、インダストリアのドクター・マンスキーの心の変化。

コナンたちを追跡するうちに、

知らずコナンたちと行動を共にすることになり

強固に信じていた科学都市のもろさに気づいていく…

ドクターマンスキーのような人々が増えることこそが大事だ。
by f-azumi | 2014-05-28 15:49 |
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